深緑野分『オーブランの少女』(東京創元社◎ミステリ・フロンティア/2013)
草花茂る美しい庭園とそこで暮らす不完全な少女たち。そこに潜む巨大な怪物と美しき狂気。
――それよりもこの日記が事実なら、あの下らない噂――オーブランの肥沃な土壌は少女の生き血を啜ったからなどという低俗なものや、この庭の本当の名前はオーブランなんて洒落た名前でなく、もっと味気ないありきたりなものだった――などを蒸し返し、オーブランの歴史を、この町の忌まわしき記憶を再び呼び覚ましてしまうのではないかと、私は危惧している。