2014年8月31日日曜日

乙一『夏と花火と私の死体』

乙一『夏と花火と私の死体』(集英社文庫/2000年)
(Jump J Books版は1996年)

語り手「わたし」は少女の死体。若き天才の描いたジュブナイルホラーの大傑作。

――最後に、踏み台にしていた大きな石の上に背中から落ちて、わたしは死んだ。

2014年7月31日木曜日

道尾秀介『向日葵の咲かない夏』

道尾秀介『向日葵の咲かない夏』(新潮文庫/2008)
(単行本は2005年刊行)

小学生が主人公のダークミステリ。この「物語」はあまりにも暗く、あまりにも哀しい。

――僕、物語を終わらせたくなったんだ。

2014年6月15日日曜日

米澤穂信『満願』

米澤穂信『満願』(新潮社・2014)

人間に秘められた「願い」を探るミステリ短編集。心裡はかくも残酷に、しかし綺麗に具現化する。

――「いえ。これで目をつむっていただきましょう」
    と言って、違い棚の達磨に後ろを向かせた。

2014年6月6日金曜日

アルベール・カミュ『異邦人』

アルベール・カミュ『異邦人』(新潮文庫/1963)

世界規模で最高峰のフランス文学。彼のこたえは世界に向けられたある「望み」。

――私はかつて正しかったし、今もなお正しい。いつも、私は正しいのだ。

2014年4月29日火曜日

歌野晶午『葉桜の季節に君を想うということ』

歌野晶午『葉桜の季節に君を想うということ』(文藝文春・2003年)
(文春文庫版は2007年刊行)

ラストまで読んで初めてタイトルの意味が解る。ゼロ年代を代表する予測不能な驚愕のミステリ。

――最近、桜の木を見たことがあるか?

2014年4月6日日曜日

アガサ・クリスティー他『厭な物語』

アガサ・クリスティー他『厭な物語』(文春文庫/2013)

帯のキャッチコピーは「読後感最悪。」。海外バッドエンドの傑作短編を11作収録したアンソロジー。

――あのかわいそうなひと、もう神経がおかしくなりかけてるじゃないの。残酷よ。

2014年3月25日火曜日

奈須きのこ『空の境界』

奈須きのこ『空の境界』(講談社文庫/2007[]-2008[])
(同人誌版は2001年。講談社ノベルス版は2004年)

人物も台詞も魅力的な舞台で、猟奇事件と能力と魔術が衝突する新伝綺小説。

――いや。オレに殺せなかったものを、おまえは今殺したんだなって。

2014年3月13日木曜日

我孫子武丸『殺戮にいたる病』

我孫子武丸『殺戮にいたる病』(講談社文庫/1996*)
(*単行本は1992年、講談社ノベルスは1994年)

猟奇殺人事件の犯人とそれを追う者たち。大学から始まるサイコサスペンスミステリ。

――飛び出さんばかりに見開かれた眼球に浮いた静脈の青が、鮮やかで美しいと思った。

2014年2月28日金曜日

桜坂洋『ALL YOU NEED IS KILL』

桜坂洋『ALL YOU NEED IS KILL』(2004/集英社スーパーダッシュ文庫)

ライトノベルレーベルの本格SF。繰り返す世界の驚愕の真実とは。

――ジャパンのレストランでは食後のグリーン・ティーは無料だと本に書いてあったのだが……本当なのか?

2014年2月11日火曜日

長沢樹『消失グラデーション』

長沢樹『消失グラデーション』(2011/角川書店)

10年代青春ミステリの大傑作。タイトルの意味が解るとその秀逸さに鳥肌が立つ。

――残酷だね、椎名は。彼女に対しても自分に対しても。

2014年1月30日木曜日

深緑野分『オーブランの少女』

深緑野分『オーブランの少女』(東京創元社◎ミステリ・フロンティア/2013)

草花茂る美しい庭園とそこで暮らす不完全な少女たち。そこに潜む巨大な怪物と美しき狂気。

――それよりもこの日記が事実なら、あの下らない噂――オーブランの肥沃な土壌は少女の生き血を啜ったからなどという低俗なものや、この庭の本当の名前はオーブランなんて洒落た名前でなく、もっと味気ないありきたりなものだった――などを蒸し返し、オーブランの歴史を、この町の忌まわしき記憶を再び呼び覚ましてしまうのではないかと、私は危惧している。

2014年1月16日木曜日

殊能将之『ハサミ男』

殊能将之『ハサミ男』(講談社文庫/2002年)
(講談社ノベルス版は1999年刊行)

探偵役は自殺願望のある殺人鬼。巧みな描写と博識な雑学が光る第13回メフィスト賞ミステリ。

――ハサミ男は残虐な殺人鬼であり、殺された少女は無垢な存在でなければならなかった。